監修者:日本プロテイン協会理事/プロテインマイスター 坂本雅俊
プロテインを始めとするスポーツニュートリション商品製造販売会社アルプロン代表取締役社長。2001年の創業以来、人々の健康と活力にあふれた毎日をサポート。2030年頃に起こるとされる世界的課題『タンパク質危機』に挑む。著作「“出世”したければ週2回筋トレすればいい」詳しいプロフィールはこちら⇒ https://alpron.co.jp/about/#message
疲労解消効果が高いと名高いクエン酸ですが、実は最大限の効果を上げるにはコツが必要です。今回はクエン酸の効果の詳細、摂取できる食品、摂取のコツまでわかりやすく解説いたします。
クエン酸の効果
クエン酸は疲労回復、代謝の向上、抗酸化作用、さらにはダイエットの効果があります。この多岐にわたる効果がある理由は、体内でエネルギー代謝の中心を担う「クエン酸回路」で必須な栄養素だからです。
クエン酸回路とは、体内の解糖系と呼ばれる、主に炭水化物からエネルギーを作り出す経路です。クエン酸は体内で摂取した栄養素を効率よくエネルギーに変え、疲労の元となる乳酸の蓄積を防ぐ作用を持っています。
そのため、体内に豊富なクエン酸があると筋肉の疲労や倦怠感が軽減され、体の本来の調子に戻しやすくなります。さらに、クエン酸には抗酸化作用があり、老化を引き起こす活性酸素のダメージを抑える働きもあります。活性酸素は肌のコラーゲンを壊し、体の細胞を傷つけてしまうなど厄介な存在です。クエン酸を摂取すれば、活性酸素の働きを抑えて美肌やエイジングケアにつながります。
また、クエン酸には血流改善効果もあり、冷え性や肩こりの緩和にも有効です。日常生活で疲労感を感じている健常な成人を対象に、レモン果汁由来のクエン酸を2700mg含んだ飲料を1日1回、28日間にわたって摂取させるプラセボ対照試験を行う研究があります。
実験の結果、クエン酸飲料を摂取したグループでは、クエン酸を摂取しないプラセボ群に比べ、主観的な疲労感の軽減や、緊張感・退屈感・いらいら感の緩和作用が認められたと報告されています。
日常生活にクエン酸を取り入れることは、健康面だけでなく美容面、精神面にも大きなメリットがあるため、積極的な摂取をおすすめします。
筋肉の疲労回復
運動やデスクワークでの長時間の同じ姿勢による作業は、筋肉に疲労物質である乳酸が蓄積しやすくなります。
乳酸が溜まると疲労感が増し、筋肉が重く感じる原因になります。クエン酸を摂取すると、乳酸の分解が促進されます。その結果、筋肉の疲労回復がスムーズになるのです。
特に、筋トレや有酸素運動後にクエン酸を摂取すると、エネルギーとして再利用され、筋肉の修復と成長が進みやすくなります。疲労がなくなり、持久力も上がるため運動の時間、質の向上にも役立ちます。また、クエン酸はBCAA(分岐鎖アミノ酸)と組み合わせることで、筋肉のダメージ回復をさらに促進し、翌日の疲労軽減に効果的です。
飲料やサプリとして取り入れることで、手軽に筋肉のケアができるクエン酸は、スポーツを本格的にする人から健康意識の高い方まで積極的に摂取していただきたい成分です。
クエン酸の疲労回復効果の即効性
クエン酸は、疲労回復効果があるだけでなく、即効性が高いことも特徴です。運動や仕事で疲れを感じた際、クエン酸を摂取すると、速やかに血流を介して体内に吸収されます。
乳酸の分解を助けることで、わずか数十分で疲労回復効果を感じることができます。論文によると、クエン酸の摂取は運動後1.5時間で明確な疲労回復効果があると示されています。疲労度は尿の色調や特定の指標(ドナヂオ値)によって測定され、クエン酸摂取群のほうが無摂取群よりも顕著に低い値を示しました。
そのため、短時間での疲労回復はもちろん、疲労自体を溜めたくない方には、クエン酸を意識的に摂取することが大切です。疲労の原因である乳酸が分解されることで、体が軽く感じられ、次の活動に向けたエネルギーが生まれます。
また、クエン酸の即効性を高めるためには空腹時の摂取が効果的とされています。短時間で体調を整えたい方や、毎日エネルギッシュに過ごしたい方は意識的に摂取していきましょう。
BCAAとの相乗効果
クエン酸とBCAAを一緒に摂取することは、単独での摂取よりもトレーニング効率がより向上することが知られています。
BCAAは、筋肉の主要成分であるロイシン、イソロイシン、バリンを含んでおり、これらが筋肉の合成を支え、運動後の筋肉ダメージの回復や持久力向上の働きを持っています。一方で、クエン酸は運動で生じる乳酸を分解して筋肉の疲労を解消し、体内で作られるエネルギーの代謝も向上させます。
このような作用の相乗効果によって、運動後の疲労が軽減され、次のトレーニングに向けたパフォーマンス向上、体の回復も早くなります。
加えて、近畿大学の研究によれば、クエン酸とBCAAの同時摂取による運動性疲労の軽減効果がアメリカンフットボール選手を対象に実証されました。
、3日間筋肉に負荷をかける運動を行った結果、クエン酸とBCAAを同時に摂取することで運動による筋損傷が軽減される可能性が示唆されました。
抗酸化作用による美肌効果
クエン酸には強力な抗酸化作用があり、美肌効果が期待できます。体内で発生する活性酸素は、細胞や皮膚のはりや弾力に関わるコラーゲンやセラミドにダメージを与え、シワやシミ、たるみといった肌の老化を引き起こす大きな要因になります。
クエン酸はこの活性酸素の攻撃性をなくす働きがあり、細胞の老化を防ぐ作用があります。さらに、血流を促進する働きもあるため、肌への栄養供給がスムーズに行われ、肌のターンオーバーが整いやすくなります。
その結果、くすみのない透明感のある肌へ改善する働きもあるため、アンチエイジングケアとしても有効です。また、クエン酸は代謝を高め、体内の不要な物質の排出をサポートし、内側から肌を美しく保ちます。
日常的にクエン酸を含む食品やサプリメントを取り入れることで、エイジングケアにもつながりやすく美容の面でもメリットが大きいです。
血流改善
クエン酸には血流を改善する効果があり、全身の健康に良い影響をもたらします。クエン酸がエネルギー代謝を活性化することで、血液がスムーズに流れるようになり、酸素や栄養の供給が効率よく行われます。
体の血流悪化で生じる冷え性の改善や、肩こり、疲労感の軽減などが緩和されやすくなります。特に末梢の血流も良くするため、手足の冷えが強い人にはおすすめです。
クエン酸は、摂取することで血流が改善する優秀な成分です。日々の食事にクエン酸を取り入れることで、身体の内側からの血行促進が期待できます。
老化予防
老化は体内の組織の酸化により、正常な組織の損傷で発生します。正常な組織の損傷に関わる大きな要因が活性酸素であり、老化の抑制には活性酸素の破壊を少なくすることが大切です。
クエン酸は抗酸化作用を持ち活性酸素の働きを抑制します。活性酸素は細胞を傷つけ、シワやシミ、たるみの原因となりますが、クエン酸はこれらの酸化を抑え、若々しい状態を保つことを助けます。
さらに、血流を促進し代謝を上げることで、細胞の新陳代謝が円滑に行われ、肌や臓器の健康もサポートされます。内側からの老化防止には、クエン酸を含む食品やサプリメントを定期的に摂取することが効果的です。
また、エネルギー代謝の促進により、疲れにくい体を維持することができます。クエン酸の摂取は、加齢に伴う体調変化を防ぎ、健康な生活のサポートになるのです。
代謝アップによるダイエット効果
クエン酸の摂取は代謝アップに寄与し、ダイエット効果が期待できます。クエン酸回路が活性化することで、体内のエネルギー消費量が増加し、脂肪が燃焼されやすくなります。
特に運動前にクエン酸を摂取することで、脂肪が効率的に燃焼し、ダイエットを促進します。
毎日の食事やサプリメントでクエン酸を取り入れることは、自然な体重管理方法として効果的です。健康的な体重を維持したい方には、代謝を高めるクエン酸の習慣的な摂取は大きなメリットなのです。
キッチン・トイレなどの水垢汚れの掃除
クエン酸は、健康効果だけではなく、環境に優しい汚れ落としとしても人気です。
特に、水垢やトイレの掃除に向いています。水垢の主成分であるカルシウムなどのミネラル成分は酸に溶けやすく、クエン酸を使うことで簡単に除去できます。
クエン酸を水で希釈したスプレー液を作り、汚れ部分にスプレーし、布で拭き取るだけで水垢が落ちやすくなります。環境や人体に優しいため、キッチンやバスルーム、トイレなどで安心して使用できます。
クエン酸が豊富な食べ物
クエン酸は人間が酸っぱいと感じる柑橘類や梅干しに豊富に含まれています。クエン酸は、摂取を心がけるだけで多くの健康効果があるため、手軽に摂取できるサプリメントも多く販売されています。
食べ物でどうしても摂取できないときもサプリメントを活用して補えば、常にクエン酸不足になりません。今回は知っておきたいクエン酸が豊富な食材やサプリメント、その取り入れ方を紹介します。
レモンなどの柑橘類
クエン酸は、レモンやオレンジ、グレープフルーツといった柑橘類です。その中で、レモンは特にクエン酸の含有量が高く、酸っぱい果物の代表でもあります。
レモン果汁100gあたり約5-6gものクエン酸を含んでおり、疲労回復やエネルギー代謝の促進のために積極的に取りたい食材です。
夏は冷たいレモン水や、冬にはホットレモンティーとして取り入れると、季節に関係なく効果的に体内にクエン酸を補給できます。レモンほど含まれてはないものの、オレンジやグレープフルーツは手軽に食べることができるため、間食にもおすすめです。
更に、柑橘類にはビタミンCも多く含まれており、クエン酸とビタミンCの相乗効果により、肌のターンオーバー促進や美白効果、免疫力の向上効果があります。クエン酸を豊富に含む柑橘類は、料理やドリンクに加えることで手軽にクエン酸を摂取できるため、食生活に取り入れやすいのも魅力です。
梅干し
梅干しもクエン酸が豊富に含まれている食べ物です。梅干しは、古くから疲労回復や健康維持のために日本で親しまれています。
梅干しに含まれるクエン酸は、100gあたり約6gと非常に多く、酸味が強いほどクエン酸含有量が高い傾向にあります。特に、疲れやすい夏場に梅干しを食べると、疲労感の軽減につながる上、塩分も含まれていることから熱中症対策にもなり、手軽さと効果が両方備わっています。
更に、梅干しの塩分には殺菌作用があるため、おにぎりや弁当のおかずとしても重宝されており、保存食としても優れています。
一粒で手軽に多くのクエン酸を摂取が可能な食材だけでなく、塩分摂取や殺菌効果など現代を生きる私達にも取り入れるメリットがある食材です。
サプリメント
最近ではクエン酸の健康効果が高く、美容や疲労解消と言った良い健康効果が多く見られることから、サプリメントの商品も増えています。
クエン酸を食品から摂取することは自然で理想的な方法ですが、忙しい現代生活では毎日十分な量を摂るのが難しい場合もあります。
そんな時、サプリメントは、忙しい時や疲れて気力がない時のクエン酸不足を補うのに適しています。販売されている商品は、錠剤や粉末状で、手軽に持ち運べるため、外出先でも簡単に摂取可能です。
サプリメントの特徴として、クエン酸が他の成分と組み合わさっているサプリもあり、筋肉の回復や美肌成分、エネルギー代謝をサポートするBCAAやビタミンB群、カルシウムなどが一緒に含まれている製品もあります。
クエン酸サプリは特に運動後や忙しい日常の中で疲労回復をしたい方、仕事やトレーニングの合間に栄養を補いたい方におすすめです。
クエン酸の摂取目安量
クエン酸の一日摂取量は目的によって異なりますが、一般的には5〜15gが目安とされています。これは、疲労回復やエネルギー代謝の促進を期待する場合の目安量です。ただし、厚生労働省やWHOといった公的機関から、クエン酸の明確な一日推奨量や安全な上限量は正式に定められていません。
クエン酸は水溶性で体内に蓄積しにくいため、適量を守って摂取すれば副作用の心配は少ないとされています。しかし、空腹時の大量摂取は胃に負担をかける可能性があるため、食後の摂取や水で薄めて少量ずつ飲むことが勧められています。
トレーニング・スポーツ時の場合
トレーニングやスポーツ時には、通常よりも多めのクエン酸を摂取することがポイントです。目安としては1日に小さじ一杯のクエン酸を、運動前、運動中、運動後、就寝前の疲労回復のためなど目的に合わせて、こまめに摂取することがおすすめです。
運動前に摂取した場合は、クエン酸を摂取することで、エネルギー代謝が活性化し、持久力の向上や運動効率の向上が見込まれます。
運動中のクエン酸の摂取では、クエン酸を摂取すると運動の持久力が上がることも知られています。スポーツドリンクなどの、飲み物とセットで摂取するのが効率的な方法です。
筋肉修復を優先するなら、トレーニング直後が最適な摂取タイミングです。筋肉に蓄積した乳酸が速やかに分解され、筋肉の修復が早くなります。加えて、疲労を軽減しやすくなるため、翌日のパフォーマンスにも良い影響があります。
習慣的にトレーニング行う方は、プロテインやBCAAと組み合わせて摂取することで、筋肉の回復と成長をより効率的にサポートできます。
日々の健康維持の場合
日常生活での健康維持を目的とする場合、1~2gのクエン酸摂取で十分とされています。
日々の疲労を予防し、代謝を高める効果が期待できるため、朝に1g、夜に1g程度のクエン酸を取り入れるとよいでしょう。
特に、朝にクエン酸を摂ると、1日の始まりに代謝が活性化し、エネルギーを効率的に使いやすくなります。また、疲労感が気になる場合には、夜の食後に摂取することで、翌朝に疲れを持ち越しにくくなる効果もあります。
柑橘類や梅干しなどの食品から自然に摂取できるクエン酸の量のため、食事と一緒に摂ると胃腸への負担も少なく、スムーズに取り入れられます。サプリメントも便利ですが、日常的には食事からの摂取を基本とすることで、栄養バランスも整えやすくなります。
クエン酸の摂取タイミング
クエン酸は、目的に応じて摂取タイミングを考えることで、その効果をより効率的に発揮できます。
運動前に摂取するとエネルギー代謝が促進され、持久力やパフォーマンスが向上するため、トレーニングやスポーツを行う30分前がおすすめの摂取タイミングです。
また、運動後に摂取すると乳酸が分解されやすくなり、筋肉の回復が早まるため、運動終了後にも摂ると良いでしょう。日常的な疲労回復を目的とする場合は、朝食後と夕食後の1日2回に分けて摂取すると、代謝が日中を通して活性化されやすくなります。
空腹時に摂ると吸収が早まりますが、胃腸が弱い方は体への負担を抑えるために食後の摂取がおすすめです。サプリメントやドリンクからも摂取でき、タイミングを工夫することで効率的に活用できます。
クエン酸を摂取する際の注意点
クエン酸は効果的な成分ですが、摂取量やタイミングには注意が必要です。過剰摂取は胃腸に負担をかけ、胃痛や下痢の原因となることがあります。
一日の目安量の15gは超えないようにし、一回の摂取は1~5gの摂取量を守ることが大切です。また、空腹時にクエン酸を摂取すると吸収が速い反面、胃が弱い方には刺激が強いため、食後に摂取する方が無難です。
トレーニング中にクエン酸を摂取する場合、エネルギー代謝の活性化や疲労軽減を目的として適量を守り、持続的なパフォーマンス向上を意識することが大切です。
クエン酸入りのドリンクやサプリメントを活用する際には摂取上限を意識するだけでなく、糖分や添加物にも注意して糖質が少ない商品を選ぶようにしましょう。
トレーニング中のクエン酸との向き合い方
トレーニング中にクエン酸を摂取すると、エネルギー効率の向上や筋肉疲労の軽減効果が期待されます。
クエン酸は乳酸の分解を助け、エネルギーとして再利用しやすくするため、トレーニングのパフォーマンスが持続しやすくなります。例えば、運動前にクエン酸を含むドリンクやサプリメントを摂取すると、スタミナが増し、持久力が求められる運動にも効果的です。
また、筋トレ後には乳酸が蓄積しやすいですが、クエン酸の摂取で疲労が早く回復するため、継続的なトレーニングが行いやすくなります。
クエン酸とBCAAの同時摂取もおすすめで、筋肉の合成と修復をサポートし、より効率的な筋力向上に繋がります。
自分の身体の疲労や明日のコンディションに合わせて摂取のタイミングを組み合わせるとより効果的になります。
クエン酸をうまく活用して元気な体を維持しよう
クエン酸は疲労回復、代謝促進、抗酸化作用など多くの健康効果を持ち、運動後の乳酸分解や血流改善にも有効です。レモンや梅干しに豊富で、サプリでの摂取も効果的です。
また、BCAAと組み合わせると、筋肉疲労の軽減やパフォーマンス向上にさらなる効果が期待できます。クエン酸を効率的に取り入れるには、目的に応じたタイミングや摂取量を守ることがポイント。美容と健康の両面で効果が期待できるため、日々の生活に取り入れてみましょう。
参考文献
https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/db/seeds/descente15_25_yamaguchi.pdf
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