人は睡眠なくしては生きていけません。それほど睡眠が体に与える影響は大きいものです。
特にアスリートは、トレーニングだけでなく食事や睡眠などのいわゆるケアの部分を
もっと気をかける必要があるといえます。
今回は睡眠が、具体的にどのように筋肉に関係してくるのかを確認してみま
しょう。
睡眠と筋肉の関係
睡眠は筋肉にどのような影響を与えるのでしょうか。まずは睡眠の役割を確認してみましょう。
体を修復する
睡眠中は、筋肉を修復させるのと同時に強化する重要なタイミングです。その働きを担うのが筋肉の回復や強化にも大きくかかわっている成長ホルモン。この成長ホルモンは睡眠中に多く分泌されるのです。
また、睡眠によって分泌が促されるアナボリックホルモンは、筋肉の合成を促し筋肥大させる働きを持っています。
脳の疲労回復
睡眠は筋肉を回復させる働き以外にも、運動パフォーマンスに影響を与えます。それが脳の疲労回復です。
脳は体を動かす司令塔。脳が疲れていると、反応が鈍くなる、集中力が低下するなどの影響がみられます。
また、記憶の定着にも関わっていることが研究でわかっています。練習で習得するスキルを体に身けるためには、睡眠が欠かせないのです。
睡眠と運動パフォーマンスに関しては、このような研究もあります。
大学のアスリートを被験者として、10時間ベットに入ることを義務付け40日間続けた結果、身体的なパフォーマンスや反応時間、コンディションの向上などの効果が現れたそうです。
コンディション維持
アスリートにとっては、日々の練習をいかに質の高いものにするか、また、試合期に良い状態を保ち続けられるかといったコンディションの維持が成績を左右します。コンディション維持に重要なのが免疫力。睡眠が不足すると、ホルモンバランスが乱れ免疫力が低下してしまうのです。
普段からハードな練習をこなすアスリートは体脂肪率が低めです。そのため風邪をひきやすく、一般の方よりも体調管理に気をつけなくてはいけません。風邪やインフルエンザ、アレルギーや自己免疫疾患などを予防するためにも、しっかりとした睡眠をとる必要があります。
睡眠時間より睡眠の「質」が大事
睡眠で大事なのは、時間よりも質です。質の高い睡眠をとることが、体を作るうえで重要になってきます。
睡眠で最も重要視したいのが、眠り始めの90分。睡眠直後に訪れる「ノンレム睡眠」がポイントになります。
睡眠中は、体も脳も眠っているノンレム睡眠と体のみが眠っているレム睡眠が交互に繰り返されますが、睡眠直後のノンレム睡眠が最も深い眠りをもたらします。そこで深い眠りをとることが重要。睡眠直後に質の高い睡眠をとることで、眠気の解消や自律神経・ホルモンの働きを活性化させ、その後の睡眠の質を高めます。
成長ホルモンも、最初の90分に最も多く分泌されます。成長ホルモンは、時間帯で分泌されるものではありません。就寝時間が遅くなってしまうという方や、睡眠時間がなかなか確保できないという方でも大丈夫。重要なのは最初の90分の質を高めることなのです。
睡眠の質を高めるためには
睡眠の質を高めるには、日中の行動や睡眠前の行動がカギを握っています。
心がけたい習慣
①運動習慣をつける
日中の活動内容によって睡眠の質が左右します。皆さんも休日スポーツなどで体を動かした日はぐっすり眠れるということを経験した方も多いのではないでしょうか。
研究でも、運動を行うことによって睡眠の質が高まると報告されています。
日中は少し強度の高めの運動が良いとされていますが、睡眠前の軽いストレッチなどの運動も
筋肉の緊張をやわらげ気分をリラックスさせて睡眠の質を高めます。
②就寝時間・起床時間を決める
睡眠も規則正しく行うことで、睡眠の質を高めます。どうしても不規則になってしまうという方は、起床時間だけでも決めた時間にしてみましょう。起床時間を決めておくことで夜に自然と眠くなり、睡眠が安定します。
③昼寝を活用
睡眠時間の確保のためには昼寝も効果的です。特に食後やトレーニング後など、成長ホルモンを多く分泌されるタイミングで昼寝を取り入れることで、体の回復とともに筋肉の成長を促します。
④体づくりの栄養を確保する
睡眠前に体を作る栄養素を摂取しておくことも忘れないようにしましょう。成長ホルモンが多く分泌されているタイミングでも、筋肉の元となる栄養素が体内に不足していたら体は成長しません。
ただ、就寝前の食事は消化器官に負担を与えてしまうので、就寝前は分解・吸収の早いプロテインやアミノ酸などのサプリメントを活用することをオススメします。
⑤入浴
睡眠前の入浴も睡眠の質を高めるのに役立ちます。眠気は体温の変化によって起こるからです。スムーズに眠りたい方は、寝る90分前に入浴するのがおすすめ。入浴後に上昇した体温が下がり、眠気が訪れるタイミングです。逆に入浴後すぐに寝たい場合は、体温を上昇させないシャワーがおすすめです。
⑥環境を整える
たとえば、室温や湿度。睡眠に適しているのは15~19℃、湿度は50%くらいが睡眠に適しているといわれています。
その他にも音や光、ベッドの質などにも気をかけて、眠りやすい環境を作るようにしましょう。
やってはいけないNG習慣
睡眠前に気をつけたいことは、脳を刺激させる行動を行わないということ。
例えば、テレビやスマホはNGです。強い光を浴びるテレビやスマホは脳を活性化させてしまい、睡眠に入りにくくなったり、睡眠の質を低下させます。
読書にも注意が必要です。続きが気になってしまって寝る時間が遅くなってしまった…
ということも。
質の高い睡眠をとるには、刺激のない退屈な状態でいることがポイント。
寝る場所や寝る時間、寝る環境などいつも同じで考える必要のない単調なルーティーンを習慣づけることが、質の良い睡眠につながるのです。
まとめ
睡眠が体に与える影響は大きなものです。質の高い睡眠をしっかりとることにより、
体づくりやパフォーマンスアップを実現することができるのです。
休養は、運動や栄養の重要性に比べ、おろそかにされがちです。
休養全体の質を高めるためにも、まず初めに睡眠についてしっかり考えてみてはいかがでしょうか。