監修者:日本プロテイン協会理事/プロテインマイスター 坂本雅俊
プロテインを始めとするスポーツニュートリション商品製造販売会社アルプロン代表取締役社長。2001年の創業以来、人々の健康と活力にあふれた毎日をサポート。2030年頃に起こるとされる世界的課題『タンパク質危機』に挑む。著作「“出世”したければ週2回筋トレすればいい」詳しいプロフィールはこちら⇒ https://alpron.co.jp/about/#message
クレアチンは運動の中でも解糖系と呼ばれる運動初期段階の疲労を解消する効果があり、近年注目されている成分です。
摂取することで無酸素運動のサポートや有酸素運動で生じる疲労の軽減も認められています。
今回は、クレアチンの成分から摂取の方法、クレアチンローディングなど知りたいポイントを栄養学から解説します。
クレアチンとは?
クレアチンとは、アミノ酸が分解されてクレアチン酸となる物質です。体内にはクレアチン酸として存在し、無酸素運動時に産生されるATP(アデノシン三リン酸)の機能維持に関わっています。
そのため、摂取することで運動のパフォーマンスが向上するという報告があります。その働きは運動だけではなく、筋肉の肥大化やストレス耐性の向上、脳機能改善にも注目されています。
クレアチンはアミノ酸の一種
クレアチンは主に肝臓や腎臓で合成されるアミノ酸の一種です。アミノ酸のメチオニンとアルギニンが体内で反応して、クレアチン前駆体と呼ばれる化合物を作ります。クレアチン前駆体は、さらに別のアミノ酸であるグリシンと反応して、最終的にクレアチンになります。
クレアチンとプロテイン、BCAA、EAA、HMB、グルタミン、アルギニン、アルファフェンの違い
クレアチンの他、栄養補助のサプリメントには多くの種類が存在しています。その中で重要なのはそれぞれの得意分野です。
1. クレアチン:
- 無酸素運動の解糖系に重要な役割を果たす栄養素
- トレーニングによる筋力向上や瞬発力を要する運動パフォーマンスの改善をサポート
- 筋肉の水分保水力が上がるため、筋肉量の増加にも大きな作用がある
2. プロテイン:
- アミノ酸が多重に結合した化合物
- EAA、BCAA含めた27種類全てのアミノ酸が含まれている
- 摂取とトレーニングの負荷を繰り返すことで、主に筋肉の修復と成長をサポートし、筋力の増強促進
3. BCAA(分岐鎖アミノ酸):
- ロイシン、イソロイシン、バリンの3つのアミノ酸を指し、主に筋肉の材料となる重要なアミノ酸
- 筋肉のエネルギー源として使われ、筋力の維持と疲労回復をサポートする働きを持つ
4. EAA(必須アミノ酸):
- 体内で作れないアミノ酸9種類のことで、食事やサプリメントから摂取する必要あり
- 免疫や筋肉の修復、エネルギー代謝にも大きな働きを持つ
- 相互作用が強いためバランス良い摂取が不可欠なアミノ酸
5. HMB(ヒドロキシメチルブチレート):
- 筋肉への多大な負荷による損傷や分解を抑制し、筋肉の保持と成長をサポート
- 特に高強度のトレーニング時に事前に摂取をしておくと怪我などの予防に効果的
6. グルタミン:
- アミノ酸の一種で、筋肉や免疫系の健康をサポート
- 筋肉の疲労回復やトレーニング時のストレス軽減に役立つ
7. アルギニン:
- アミノ酸の一種で、突然変異を受ける前駆体として知られている
- 筋肉の血流を向上させ、老廃物の排出や疲労の回復速度を早くする
8. アルファカエトグルタル酸(アルファフェン):
- 筋肉の疲労を軽減し、エネルギー代謝を改善
- クエン酸経路に作用しアミノ酸のエネルギー代謝に関係
- テストステロンに似た働きを持ち活力増強作用が注目されている
クレアチン・モノハイドレートとは?
クレアチン・モノハイドレートとは、クレアチンに水分子が結合している状態の名称です。クレアチンが水分子として結合することで、分子としての安定性が高くなり壊れにくくなります。
また、クレアチン単独での摂取に比べて、体内への吸収率も高くなります。クレアチンの体内の吸収率をより上げたい場合はモノハイドレートの商品を選びましょう。
クレアチンの効果
最近注目されているクレアチンですが、摂取後の様々な効果について研究報告がされています。
運動パフォーマンスの向上が期待できる
クレアチンは私たちの体にもともとある物質で、特に高強度な運動をする時に重要な役割を果たします。
運動を始めると、体内で糖分が分解されてエネルギーが作られます。このエネルギーはATPという形で使われますが、運動中に一部が酸化されてしまいます。しかし、クレアチンがある場合、ATPが本来のエネルギー源に戻してくれるのです。
これにより、瞬発力の向上が期待されます。
筋肉量の増加
クレアチンは筋肉内の水分を保持する効果があります。
筋肉内の水分が不足すると、老廃物の排出や栄養の供給がうまくいかず、筋肉の成長に支障をきたすことがあります。しかし、クレアチンがあると、運動前の筋肉の水分を保ってくれるので、筋肉量の増加に役立つとされています。
骨や脳への効果
クレアチンの摂取には、骨の健康や脳の機能向上にも良い影響があります。
骨には骨形成と骨破壊という2つの働きがありますが、クレアチンがあると、骨を丈夫に作る骨形成が活性化されることが分かっています。
また、クレアチンの摂取によって、脳の判断力や反射神経が向上するとの報告もあります。
睡眠不足のラグビー選手におけるパスの正確性実験やeスポーツにおいて、クレアチンの効果が示されています。
メンタルへの効果
クレアチンの摂取には、物事の前向きな判断力を促す働きがあることも研究で判明しています。
特に、睡眠不足や強いストレス下においても、認知機能や決断力、行動力の向上が見られるといった報告もされています。
クレアチンの効果はいつから実感できる?
クレアチンは食料品から体内で合成することが可能な成分で、成人の場合、一日に2gが使用されると言われています。
そのため、毎日の目安量を摂取し続けて一ヶ月程続けることが肝心です。(後ほど解説しますが、クレアチンの一日あたりの摂取量の目安は5〜10gが目安です)
クレアチンの効果は、摂取したことによって以前耐えられなかった負荷への適応力が実感できるようになると言われています。
例えば、運動の耐久力の向上や疲れにくさ、俊敏性の向上などです。
摂取をやめると急激に効果がなくなるものではないものの、効果の実感を感じるには時間がかかるのがクレアチンの特徴になります。
クレアチンは筋トレに効果的なのか?
筋トレは筋肉に負荷をかける動作と俊敏性を要求する動作が多いです。
デットリフト、ベンチプレスと言ったウエイトリフティングがその代表です。
瞬間的に力を加える動作には無酸素運動で使用する筋肉の力が不可欠です。ダンベルを使用したトレーニングも同様で、持ち上げる動作のたびに、クレアチンが消費されます。
そのため、事前にクレアチンを摂取しておくことで、トレーニング回数の増加や、より重い負荷のトレーニングでの耐久力の向上が期待されます。
また、クレアチンを事前に摂取することで水分量を維持することができ、筋肉の肥大効果を期待できるだけではなく、筋肉がつるといった怪我の防止にも役立てることが可能です。
クレアチンは何に含まれる?
クレアチンはアミノ酸から合成されるため魚や肉類に多く含まれており、サプリメント以外からでも摂取可能です。
しかし、野菜や豆類といったものには多く含まれておりません。
食品500g中のクレアチン含有量(非加熱時)
ニシン | 3.3g |
豚肉 | 2.5g |
牛肉 | 2.2g |
サケ | 2.2g |
マグロ | 2.0g |
タラ | 1.5g |
食品で意識的に摂取したい場合、上記の食品や肉類もしくは魚類を中心に摂取するといいでしょう。
サプリメントは効果的なのか?
体内で合成ができる成分のため、クレアチンの摂取は意味があるのかと疑問に思われる人も少なくありません。
実はクレアチンはトレーニングの負荷や頻度に応じて消費されます。食事摂取によって、補うことができますが、運動の負荷以上のクレアチンの消費が続くと体内の合成分で十分なクレアチンを補うことができません。
仮に、クレアチンが体内で不足している状態でトレーニングを続けるとパフォーマンスが低下し、モチベーションの低下やトレーニングが苦痛になってしまう原因になってしまいます。
このような体内環境を回避するためにも、サプリメントで補うことは大きなメリットです。
クレアチンの効果的な摂取方法
クレアチンを摂取していてもタイミングや量を間違ってしまうと最大限の効果を上げることはできません。
ここでは、運動における瞬発力や筋トレ効果を最大限に上げる正しい摂取の方法を解説いたします。
クレアチン摂取のタイミング
クレアチンの働きを最大限に上げるタイミングは、運動前と運動後です。
運動前に摂取をするメリットは、糖の分解によってエネルギー産生時に使用されたATPの再生の働きに使用されるためです。
体のエネルギー燃焼は、糖、アミノ酸、脂肪の順に使用されます。そのため、糖の分解で一番最初にクレアチンが使用されることで、運動の疲労を軽減することが可能です。その結果、継続的に運動を続けることができます。
結果、脂肪燃焼開始まで運動を続けることに苦痛がなくなり、有酸素運動の継続時間を長くすることができます。無酸素運動は、同じ運動の反復の継続や瞬発力の向上が見込めます。
運動後に摂取するメリットは、クレアチンの働きに運動をしたあとの疲労を溜めにくくする力があることから、筋肉の疲労回復を早めることができる点です。
クレアチンの摂取量
クレアチンの一日あたりの摂取量は5〜10gが目安です。
クレアチンは尿によって排出されるので、少し多めの摂取がおすすめです。
一度に多く摂取するのではなく、5gを2回などこまめな摂取が大切です。過剰量の摂取は、筋肉に使用されることなく、体外に排出されてしまいます。
こまめに摂取することで、体内で使用されるクレアチンの量を増やすことができます。
クレアチンローディングとは?
クレアチンローディングとは、クレアチンを毎日摂取を続け、体内に潤沢にある状態を作り出します。
豊富にクレアチンがあることで、激しい運動やトレーニングを行ったとしても疲れにくく、最大負荷がかかっても回復が早くなるとしてアスリートに取り入れられている摂取方法です。
最近は、健康志向の高まりから、筋トレやダイエットなどの運動にも取り入れられています。
クレアチンローディングをすることで、クレアチンの筋肉の体内保持する力が急速に上昇し、効果を早く実感しやすくなるとされています。
ただし、ローディング期間中に適切な水分摂取を心掛けることが重要で、十分な水分補給を行わないと脱水のリスクがありますので注意してください。
クレアチンのローディングは、特に高強度のトレーニングやアスリートなどが行う場合が多いです。
そのため、取り入れる場合は、個人の体質や健康状態に応じて適切な方法を選択することが重要です。
クレアチンローディングの方法
クレアチンローディングの方法は、ローディング期間中と後で大きく異なります。
ローディング期間中は、クレアチンを5〜7日を目安に、1日あたり20g程のクレアチンを摂取します。この時重要なのは一回に10g摂取するのではなく、5gなど小刻みに摂取して、体内に吸収できる最小限の量にすることです。例えば、朝、昼、夕食後などに分けて摂取します。
摂取するクレアチンの量に応じてタイミングを増やすことがおすすめです。
上述のとおり、クレアチンには筋肉に水分を保持する働きがあり、水分を多めに摂取することが重要です。パウダータイプの商品の場合は、水に溶かして飲むため水分補給が同時にできますが、タブレットの場合は意識して水を飲むようにしましょう。
ローディング後は、通常の摂取量に戻します。
一般的には1日3〜5グラム程度を維持量として飲み続けましょう。
摂取をやめると筋肉で多くのクレアチンを保持する力が急激に落ちてしまいます。それを防ぐためにも、1日5〜10gの通常摂取を維持することで、クレアチンの筋肉の保持力低下を抑えられます。
クレアチンの摂取で気をつけること
クレアチンは、使用後腎臓で代謝されクレアチニンという物質になります。このクレアチニンが高めの数値の人は、腎機能の負担軽減のため摂取を避けるようにしてください。
通常摂取の時でも、クレアチンは一度に多量の摂取をすると、腎臓に負担をかけてしまいます。そのため、一度の摂取においては少ない量(2g程度)をこまめに摂取をするようにしましょう。
使用前に一日の目安量確認をすることも忘れずに守ることをおすすめします。
クレアチンの摂取の副作用はあるか?
クレアチンは運動時のパフォーマンスを向上させ、疲労回復にも効果的ですが、副作用が心配されることもあります。特に腎機能や肝機能の低下、体重増加、筋肉の痙攣が指摘されることがあります。しかし、これらの副作用について明確な科学的証拠は限定的です。
陸上競技者を対象にした研究では、クレアチンを標準的なローディングおよびメンテナンスの方法で使用した際、肝機能に悪影響を与えることはないと報告されています。また、クレアチンの摂取が体重を1.0~2.3%増加させることがありますが、これは筋肉量の増加が原因であり、脂肪の増加ではありません。
通常の摂取量であれば、クレアチンによる重篤な副作用の心配は少ないとされていますが、腎疾患を持つ人は副作用のリスクが高まる可能性があるため、注意が必要です。
疲労軽減や筋トレに効果的なクレアチン
クレアチンは、摂取を行うと運動の疲労の軽減や瞬発力や俊敏性が高くなるという報告がされています。筋肉をたくましくし、筋トレ効果もあがる成分です。摂取は1日10g程が目安で、2g程をこまめに摂ることがコツです。
特に、運動前と運動後に摂るのがおすすめで、運動前に摂取すると疲労が溜まりにくく継続的に活動できます。運動後は、筋肉の疲労解消や回復期のときの判断力の向上が見込めるのです。
運動の種類に関係なく、摂取のメリットが高いクレアチンの長所を取り入れる参考になれば幸いです。
おすすめのクレアチンサプリ
おすすめのクレアチンのサプリメントを紹介します。
ALPRON クレアチン (100g)
筋トレやダイエットのサプリメントで有名なアルプロンが製造したクレアチンサプリメントです。クレアチンモノハイドレートが99.9%を含む高品質であり、不要な成分が入っていない純度が高い製品です。クレアチンの体内への吸収を最大限にし、筋トレや運動の底上げを第一に考えて製造しています。
参考文献
C.J. Cook et al., 2011,Cook et al., 2011Van Cutsem et al., 2019,Watanabe A et al., 2002.