監修者:日本プロテイン協会理事/プロテインマイスター 坂本雅俊
プロテインを始めとするスポーツニュートリション商品製造販売会社アルプロン代表取締役社長。2001年の創業以来、人々の健康と活力にあふれた毎日をサポート。2030年頃に起こるとされる世界的課題『タンパク質危機』に挑む。著作「“出世”したければ週2回筋トレすればいい」詳しいプロフィールはこちら⇒ https://alpron.co.jp/about/#message
低GIという言葉は、さまざまな食品のパッケージに書かれています。ボディメイクや健康管理に気を遣う方なら、よく目にするでしょう。
低GIな食品が体にメリットをもたらすことは、漠然とは理解できます。しかし具体的にはどのような働きをするのか、分かりにくいのではないでしょうか。
そこでこの記事では、低GIとはどういうことなのか。また体にどのようなメリットをもたらすのか、についてご紹介します。
GI値とは
GI(Glycemic Index)値とは、ある食品を食べた際に、血糖値がどのくらい上昇するかを表した数値です。1981年にトロント大学のジェンキンス博士が発表しました。
食品に含まれる糖質が体内で消化吸収されると血糖値が上昇しますが、食品によって血糖値の上がり方は異なります。これを数値によって表したものがGI値です。
GI値の一覧はオーストラリアのシドニー大学によって2002年に改訂されており、今や世界的な指標として広く用いられています。
血糖値とは
血糖値とは、血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。
ご飯やパンといった食品には、豊富に炭水化物が含まれています。
体内に取り込まれた炭水化物は消化吸収の過程を経て、体内で吸収されやすいブドウ糖という形に分解されたのち、血液中に入り、身体中を巡りながらエネルギーとして使われます。
この血液中のブドウ糖の濃度が血糖値です。
炭水化物のGI値・低GIにこだわるべき理由
健やかな心身の状態を維持するために欠かせない炭水化物を過不足なく摂取しながらするために、炭水化物のGI値を把握することが大切です。
その理由は3つあります。
- 血糖値の急上昇は臓器にとって負担
- 高血糖の状態は生活習慣病につながる可能性がある
- 血糖値の上がりやすさは食品によって異なる
食事によって血糖値が上昇すると、膵臓からはインスリンとよばれるホルモンが分泌されます。インスリンの主な働きは次の2つです。
- 血糖値を下げる
- 脂肪細胞に働きかけて中性脂肪を合成する
血糖値が上がりやすい食品を大量に摂取したことで、インスリンが大量に分泌されると脂肪が合成されやすくなります。
さらに体に備わった恒常性によって、急降下した血糖値を元に戻すよう脳から指令が出されることから、食欲が増して太りやすくなることも懸念点です。
血糖値の乱高下が続けば、猛烈な眠気や集中力の欠落、気持ちの落ち込みといった日常生活に支障をきたす心の不調が現れることもあります。
また血管に負担をかけることで高血圧や動脈硬化といった心疾患につながる可能性があるほか、血糖値が高い状態が続くことで糖尿病をはじめとする生活習慣病につながる可能性もあるので注意が必要。
ただし炭水化物のすべてが、血糖値を急上昇させるわけではありません。
糖質の種類や含まれるほか成分によって、血糖値の上昇が緩やかな炭水化物もあります。
炭水化物は、タンパク質、脂質と並んだ三大栄養素のひとつです。特に炭水化物が分解されたあとの糖は、体内で容易にエネルギーに変換しやすいため、効率の良い燃料といわれています。
それと同時に糖は、脳にとっても即効性の高い重要なエネルギー源です。健やかな体を維持するためには、血糖値を上げにくい種類の炭水化物を適量摂取することが大切です。そして血糖値が上がりにくい食品を選定するために、GI値は参考になります。
GI値の分類・低GIとは
GI値は数字によって分けられています。
GIのランク | GI値 |
高GI | 70以上 |
中GI | 56~69 |
低GI | 55以下 |
数値が大きくなるほど、血糖値が上がりやすい食品であるといえます。健康的な食生活のために日常的に摂取する食品には、低GIの食品群から選ぶことが大切です。
また1998年には、FAO(国連食糧農業機構)とWHO(世界保健機構)が、GI値を炭水化物の重要な代謝指標であると発表しました。それと同時に、GI値の低い食品の摂取を推奨しています。
GI値を下げる工夫
GI値を下げて血糖値の急上昇を防ぐために、低GIの食品を選ぶことが大切です。さらに食事の方法を工夫することでGI値を下げることが可能であることも複数の研究からわかっています。
具体的な方法は、次の3つです。
- 食物繊維の多い食品を一緒に食べる
- 主食を最後に食べる
- ゆっくりよく噛んで食べる
-
食事前後にプロテインを併用する
それぞれの方法を説明していきましょう。
1:食物繊維の多い食品を一緒に食べる
食物繊維には、ほかの食品のGI値を下げる効果が期待できることがわかっています。
特に海藻やきのこ類といった水溶性食物繊維を豊富に含む食品には、GI値を下げる効果が期待できます。水溶性食物繊維が、ほかの食品に含まれる糖を包み込むことで、吸収されるスピードを緩やかにすることが可能です。
2 : 主食を最後に食べる
GI値を下げるためには、食べる順番も重要です。
主食、メインのおかず、副菜の食べる順番を変えて血糖値の変化を調べた研究によれば、最も血糖値が低いのは、副菜→メインのおかず、主食の順で食べた場合でした。
また主食を最初に食べた場合は、血糖値の上昇が著しいこともわかっています。
野菜のように食物繊維の豊富な副菜を最初に食べて、炭水化物の多い主食を最後に食べることで、GIを下げながら食事を摂ることが可能といえます。
3:ゆっくりよく噛んで食べる
ゆっくり時間をかけて食事すること。さらに十分に咀嚼しながら食事することは、GIを下げるために大切なポイントです。
咀嚼回数を増やしてゆっくり食事を摂ることで、少量の食事で満足感を得ながら血糖値の急上昇を防ぐ効果が期待できることが研究からもわかっています。
脳の満腹中枢が食事による血糖値の上昇を感知するまでに、およそ15分程度の時間を要するともいわれています。無理なく食べ過ぎを防ぐ意味でも、ゆっくりよく噛んで食事する習慣を心がけてください。
4:食事前後にプロテインを併用する
食事の前後にタンパク質を少量摂取することで急激なGI値の上昇や全体のGI値をコントロールしやすくなります。さらに、ソイプロテインであれば腹持ちがよくなるので、血糖値やGIを下げることに効果的です。また、英国のニューカッスル大学は、2型糖尿病の人の血糖コントロールに役立つという研究を発表している。
プロテインを飲んでGI値をコントロールしよう
低GIの食品を意識的に摂取することは、体への負担を減らし、健やかな心身を育むために大切です。
血糖値を急上昇させる高GIの炭水化物を控えることで、インスリンの分泌が穏やかになれば肥満の予防策として有効であると同時に、生活習慣病を遠ざけることにもつながります。
低GI食品を選ぶことと同時に、食べ方にもGIが上がりにくくなるような工夫を取り入れながら、血糖値の乱高下を防ぐ食生活を習慣づけましょう。
参考文献
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